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2005年のクリスマス(表紙)

ようこそ特設ページへお越しくださいました。

ここはダ・カーポセカンドシーズン完結記念SS「2005年のクリスマス」
入り口です。

そんなに長くはないんでお気軽な気持ちで読んで頂ければと。
もち、ことりマンセーストーリーです。
また、セカンドシーズン最終話の激しいネタバレがありますので、
閲覧の際はご注意ください。

#1「クリスマス・イブ」へ

もしくは

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HTML版はこちらへ(1/9追加、制作メモ付。読みやすいのでお勧め)

※通常「日々の日記」を記している都合上、
 2005/12/01付の日記の形で掲載しています。
 (実際の投稿は2005/12/25です)

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#1 クリスマス・イヴ

初音島の桜が、普通の桜になってから3度目のクリスマスがやってきた。

義理の妹である、朝倉音夢。
あいつは今、初音島の外にある養護学校で勉強にいそしんでいる。
いきなり研修医になってサプライズ復帰なんてことはしない。
あの真面目一辺倒の義妹にそんな大胆な真似ができるわけないのだ。

だから、今年のクリスマスも、一人だ。
さすがに年末には帰省するだろうけど、それも年の瀬ギリギリだろう。

でも、別に寂しいとかそんなことはない。
何もしなくたって杉並が(俺を巻き込むように)騒ぎを起こしていることもあるが、
なにより、お節介焼きの白河ことりを初めとした友達みんながサポート部隊を結成し、あれこれと俺の世話を焼いてくれている。
考えてみれば、これほど恵まれた環境はないとも言えるかもしれない。

ずっと付き添ってきた妹が居ない寂しさが、ないわけでもないけど、
俺もいい加減妹離れしないとな。
少なくとも皆の前で、そんな素振りを見せるわけには行かない。

そんなわけで、クリスマスが目前に迫った、前日。
世間で言うところのクリスマス・イヴ。
冴えないテレビを見ながらゴロゴロ過ごしていると……。

ピンポーン。

チャイムが鳴った。
はいはい、今出ますよ。

「朝倉君、ちわっす!」

ことりだった。
あれ、今日来るなんて約束してたっけ……?

「朝倉君、いまお暇ですか?」

「暇と言えば暇だけど……」
「暇と言えば、じゃなくて暇そのもの、ですよね?」

文字通り、心を見透かされた気がする。
他人の心を読み取れなくなっても、ことりは鋭い。

「別に私が鋭いわけじゃないっすよ……
 こんな時間にパジャマのままだったら誰だってそう思います」

「!」
「ま、まぁ、とにかくお暇なら、一緒に出掛けません?」

「そ、そうだな」

迂闊だった。
一人でいるとやっぱりかったるい虫が顔を出してしまう。
とにかく、俺は話の流れでことりと出掛けることになった。

「それで、何処に行くんだ?」
「特に決めているわけではないんですけど……商店街なんてどうでしょうか」

「了解」

商店街なら時間つぶしに困ることはない。
ましてやこの時期だ。
一年で一番華やかなことだろう。
商店街の入り口に差し掛かると、早速声が聞こえてきた。

「よろしくお願いしまーす。美味しいケーキはいかがですかー?」

サンタのカッコをした少女がチラシを配っている。
何処かで会ったような、聴いたことのある声のような気もするが、
気のせいだろう。

「ね、そこのキミ」

「え、俺?」

突然サンタ少女に話しかけられてしまった。
年の頃は、俺と同じくらいだろうか?
日本離れした感じがする顔つきの少女だ。

「そうそう。キミ、ケーキは要らないかな?」

「要らない」
「即答ですか……。キミが要らなくても隣の彼女さんへ、プレゼントとか」

サンタ少女はことりを指差して言う。

「わ、わたしは…」

だがことりが何かを言いかけ、そのまま口をつぐんでしまう。

「あー、プレゼントならもう用意してあるんで。結構です」
「えっ?」

「あ、そうなんだ……。じゃあせめてチラシだけでも」

「あいよ」

チラシを受け取ると、俺達は逃げるようにサンタ少女から離れた。
ああ言うのに絡んだってロクなことはないからな。

「あ、あのっ、朝倉君」

「どうしたことり」
「その、手……」

俺はいつの間にかことりの手を握っていた。
無意識のうちにことりの手を掴んで、サンタ少女から逃げていたのだ。

「あ、ごめん」
「ううん、いいんだけど……」

ことりの顔がほんのりと赤い。
ううむ、柔らかかったな。ことりの手……。

「朝倉君、プレゼント、用意してあるって……?」

「あ、ああ音夢に――」

しまった、つい本当のことを喋ってしまった。
年末に帰ってくる妹にプレゼントを用意してたのは事実だ。

「音夢さんに?」

「い、いや、ことりにも用意してあるんだ」
「えっ?」

すまん、ことり。
これから用意するよ……。

「あ、朝倉せんぱ~~~~~い!」

遠くからわんこの声が聴こえて来る。
天枷美春が遠くから走ってくるのが見えた。
いつもはうるさいだけの美春が、このときは救世主に見えた。

「天枷さん」

「どうしたんだ、美春」
「はぁっ、はぁっ、探しましたよぉ~。朝倉先輩ぃ……」

「探したって、何か用か」
「そうです。用です。それも大変っっな用です。
 何度も電話してるのに、朝倉先輩、ちっとも出てくれないんですもん」

俺は慌てて携帯電話を開く。
美春から何度も着信があった。

「うわ、悪かったな美春」
「いえっ、そんなことはいいんです。こうして朝倉先輩も見つかりましたし」

「それで、何があったんだ?」
「いいですか、驚かないで下さいね?」

「いいから早く言え」

美春は息を整えてから、言った。

「いま、音夢先輩が初音島に向かってるらしいんですよ!」

「!!」
「えっ……?」

携帯電話の着信履歴をさかのぼると、美春で埋め尽くされるさらに前、
妹の、『朝倉音夢』の名前が残っていた。

#2へつづく

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#2 帰ってきた魔法少女

初音島フェリー乗り場。

俺、ことり、美春の3人は音夢を出迎えるためにここに来ていた。
美春によると、話はこうだった。

「さっき、音夢先輩から電話があってですね。
急に兄さんの顔を見たくなったから、初音島に帰ります』って。
 それで、もう向かわれてるのだそうです」

――。

――――。

「遅いですねぇ」

美春の声で我に戻る。
フェリーが到着してしばらくするが、それらしき影は見えない。
美春の話から考えると、この便に間違い無いのだが……。

「あ、あれっ?」

ことりがらしからぬ素っ頓狂な声を上げる。

「ことり、どうした?」
「あれ……芳乃さんじゃないでしょうか」

ことりが指さすその先。

ガラガラガラ。
不釣合いな茶色いスーツケースを引っ張っている金髪の少女が目に入った。

「あっ、お兄ちゃんっ!」

ガラガラガラガラッ
物凄い勢いでスーツケースと金髪の物体がこっちに向かってくる。

ぎゅ~~~~

かわす間も無く、俺は金髪の物体に抱きつかれていた。

「お兄ちゃん~! 連絡してなかったのに迎えに来てくれるなんて。
 ボク嬉しいよ~! これも愛のなせる業だねっ」

「いや、さくら、あの……」
「あの、芳乃さん」

「……え? あれ、白河さん?」

さくらは俺に抱きついたまま、きょとんとした表情でことりを見つめている。

「私たち、音夢さんを迎えに来たんです」

「えっ?」

「そうなんですよぉ~。さきほど、音夢先輩から連絡がありましてっ!」

「にゃ、にゃはは……そうなんだ……」

そう言うさくらには冷や汗のようなものが浮かんでみえた。

「さくら?」
「お兄ちゃん……」

「とりあえず、離れてくれないか」
「あ、うん……」

さくらは大人しく俺から離れた。
そんなさくらに、ことりが声をかける。

「芳乃さん、お時間ありますか?」

「え、うん。ボクは大丈夫だけど」

「だったら一緒に音夢さんをお出迎えしませんか?」

「う、うん……そうだね」

さくらの返事はどこか上の空だ。

「さくら、同じ船で見掛けなかったのか?」
「う、う~ん……まさか同じ船に乗ってるとは思わなかったから……」

しばらくそんな感じで話しながら、降りてくる人を待ち続ける。

「あっ!居ましたよっ!!」

突然声を上げた美春が指さすその先には、見覚えのある髪型の少女が居た。
間違いない。

「音夢せんぱぁ~~~い!!」

美春が大きく手を振る。
向こうも気付いたらしく、手を振るのが見えた。
誰かと違って慌てて走ってくることなく、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
懐かしい顔が、俺の妹がだんだんはっきりしてくる。

「……っ!」

突然、音夢の顔が揺らいだ。
まるで、見えない何かに刺されたかのように、
その表情は苦痛の歪み。
そして――――

ドサっ

「音夢ッ!」
「音夢先輩っ!?」

「音夢さん!」

「音夢ちゃんっ!」

鈍い音を立てて音夢はその場に倒れ、動かなくなった。

――――初音島の空には、季節外れの桜が舞っていた。

#3「祝福の風」へ続く

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#3 祝福の風

あれから――音夢は病院に運ばれた。
絶対安静の昏睡状態にあった。原因は……不明。

その病室の廊下にいま、俺達はいる。
どうしていいか分からない。
それは、ことりも美春も一緒だった。
美春にいたっては今にも大泣きを始めてしまいそうだ。

「お兄ちゃん、ちょっといいかな」

「どうした、さくら」
「…………に行きたい」

えっ?
さくら、今なんて……。

「白河さん、ちょっとお兄ちゃん貸してもらえるかな?」

「芳乃……さん?」

「お兄ちゃんと、行きたいところがあるんだ」

口調は優しいが、さくらの言葉には有無を言わせぬ雰囲気があった。

「悪いな。ことり、美春。ちょっとの間頼むよ」
「……ふぁい」

「おまかせっす」

泣き出しそうな美春と、気丈に振る舞うことり。
感謝してもしきれないな。
俺はさくらと2人、病院を出た。

――あの桜の木を見に行きたい。

さくらは確かにそう言った。

+ + +

風が吹きぬけ、桜が舞う。
狂ったように咲き乱れる魔法の桜。
そう、桜は満開の花を咲かせていた。

勘の鈍い俺でも予想できたことだ。
さくらは当然分かっていたのだろう、特に驚いた様子はない。
少なくとも、顔には出さない。

「お兄ちゃん」

「ん?」
「なんでボクが帰って来たのか、わかる?」

「なんでって……帰省、じゃないのか?」
「それもあるけどね。でも普通、帰省ってもうちょっと後、でしょ?
 ボクと音夢ちゃんがこのタイミングで一緒に帰って来た。
 まるで、何かに引き寄せられるように……」

さくらは乱れ咲く桜に手を伸ばす。
たしかにさくらの言うとおりだ。
音夢にしたって、どうして突然帰って来たんだ。
どうして、さくらと音夢が、同時に……。
そして、この桜が満開に……。

「この桜は……初音島の魔法の桜は……純粋な願いを、具現化するんだ」

「純粋な、願い……」

2年前まで初音島にあった魔法の桜。桜が枯れると同時に、
その桜が叶えてきた純粋な願い――すなわち、魔法の力は消滅した。
いや、したはずだった。

「ボクはね、予感がしたんだよ。初音島で何かが起こるような。
 だから本当は、お兄ちゃん達に会う前にここに来るつもりだった。
 初音島で起こるコトには、どんな形にせよこの桜が関わってくるからね」

「…………」
「にゃはは。
 戻ってきたら既に桜が満開だったなんて。さすがにビックリしたよ」

「さくら、知ってるのならもっとはっきり言ってくれ」
「…………お兄ちゃん、普段は鈍感なのにときどきすっごく鋭くなるよね。
 やっぱりお兄ちゃんにはかなわないよ」

俺はさくらをまっすぐに見つめる。
さくらは俺なんかよりずっと魔法の力が強い。吸い込まれそうになる。
だが、目をそらすわけには行かない。

「お兄ちゃん、パラレルワールドって、わかる?」

「パラレル……? 平行とか、そんな意味だっけ」
「そう。この世界と同じようで同じでない世界。
 たとえば、お兄ちゃんがボクと結ばれたり、猫耳メイドさん達と暮らしたりしてる世界もある、かもしれないってこと。もちろん、今ココに居るボクたちが行くことはできないけどね。決して交わることのない、それが平行世界」

「…………」
「でも、平行世界の『純粋な願い』が別の世界に影響を及ぼすことはあるかもしれない。それが、今なんだと思う」

それは、つまり……。

「はっきり言っちゃうとね、
 お兄ちゃんと音夢ちゃんが結婚しちゃった平行世界があるんだよ」

「なっ……!!」

そんなかったるい世界があるのか。
とてもじゃないが、直視できないだろうな。

「そんなこと、ありえないと思うでしょ? でも本当なんだ。
 そんなものを見せ付けられた人たちの『純粋な願い』が桜に届いたんだ」

「その『純粋な願い』って、もしかして……」
「そうだよ。音夢ちゃんなんて居なくなっちゃえばいいのに、って……」

「誰が、そんなこと……」

――さくら?

「違うよ、ボクじゃない。
 元々、今ここにある桜を枯らせたのはボクなんだ。そんなことはしないよ」

「じゃあ、いったい誰が?」

――ことり?

いや、彼女はそんなことを願ったりはしない。
それは俺が良く知っている。
ちがう。
そうじゃない。
そんなはずない。
純粋な願い……音夢が倒れてしまうような願い。
いったい誰が………。

「きっと、そんなありえない結末を見せられた人みんな、だと思う」

「え?」
「そう、みんなの純粋な願いが……」

「……その結果が、この、桜……?」

俺は満開の桜を見上げた。

「でも、もしそうだとしても、その世界の桜がはたらくんじゃないのか?」
「う~ん。それもそうなんだけど……
 なんでだろうね、平行世界のボクが枯らしてしまったのか、
 あるいは他の魔法使いの関与でもあったのかな」

不意に商店街で話しかけられたサンタ少女が俺の頭に蘇ってきた。
何故かは分からない。
まるで悪い夢を見せられているような感覚に陥ってきた。

「とにかく魔法は発動してしまった。ボクにはもう止められない。
 じきに、音夢ちゃんは消える。お兄ちゃんの記憶からも消える」

「…………!」

音夢が消える。俺の記憶からも消える。
それは、さくらにも止められない……。

「お兄ちゃん、もしお兄ちゃんに大事な人が居るなら、そこに行って」

「……え?」

さくらは何かを決意しているようだった。
その目を見て、俺も覚悟を決める。

「なにもかも終わったとき、一人じゃ寂しいでしょ?」

どこか物悲しい、でも笑顔のさくら。
さくらは今、何を思っているんだろう。

「……さくら」
「お兄ちゃん、早く!」

「さくら、ゴメン。あとは頼む!」

俺は走り出した。
もう俺にとって大事だった妹は助からない。
でも、今はもっと大切な人が居る……!

――――。

――。


「あ~あ、お兄ちゃんやっぱりボクを選んでくれなかったね。」

狂ったように咲き乱れる桜がボクの視界から、お兄ちゃんを消し去った。
ボクは首に下げている赤い宝石を取り出す。

「さ、いいかな」


「OK、My Master――」

+ + +

――エピローグ――

初音島の桜が、普通の桜になってから3度目のクリスマスがやってきた。
今年は寂しいなんてことはない。

「朝倉君……」

「ことり」

今年のクリスマスは、一人ではないからだ。
俺にとって大切な人が、一緒にいる。
これからずっと一緒に付き添っていくであろう、大切な人が。

「その、私は嬉しいですけど……朝倉君は、いいの?」

俺は懐からプレゼントを取り出し、ことりに手渡した。
ことりは驚いた顔で俺を見つめる。

「えっ、これ……」

「言ったろ? プレゼント用意してるって」
「でも、朝倉君がそんなかったるいことするなんて」

ことりは笑った。俺も苦笑で返す。

「かったるい……かもしれない。
 でもことりには感謝してるよ。だから、今日くらいは恩返しさせて欲しい」
「……恩返し、ですか」

「それだけじゃないよ。
 ことりが居てくれて分かったんだ。俺は、ことりのことが……」
「朝倉君……!」

――――パタン。

ボクは雨戸を閉めた。
視界が暗闇で覆われる。

「にゃはは、やっぱり見てられないね。
 って、そもそも覗き見なんてするボクが悪いのかもしれないけれど……」

…………。

「これでいいんだ……。
 お兄ちゃんも、初音島のみんなも、永遠に『彼女』のことを忘れられる。
 お兄ちゃんも幸せになれる。
 それが、それが――みんなの本当の願いなら」

「うにゃあ~」

横で小さく鳴くうたまるを抱きながら思う。
再び桜が消えた初音島。
でもそこには、舞い乱れる桜の代わりに祝福の風が舞っていた。

「ダ・カーポ。終わりまで行ったら始まりに戻る。
どこかの世界で、一つの話が終わった。
 そう、お兄ちゃん達にとって『始まり』は今なんだよ――」


ダ・カーポ完結記念SS「2005年のクリスマス」


あとがき

ひとことで言えば「俺が望むダ・カーポ」なわけですが。
思いつきはもちろんギャグ。
それをシリアスにまとめるという馬鹿な作業。

本編最終話放送終了から12時間、書き始めてから3時間で作ったにしては、
我ながら良く出来てるのではないかと(笑)
設定はD.C.S.S第1話と同じ、と言うことでお願いします。
サブタイは、分かる人用(ぉ)

質問感想、誤字脱字指摘、矛盾点等、メールフォームでもコメント欄でも
同盟でも構いませんので、頂戴できれば幸いです。

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