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春のラノベレビュー(13)とある飛空士への追憶

Dsc05352

いつだって忘れた頃にやってくるラノベレビューシリーズ。
いつも何冊かまとめてレビュー記事として上げてるんですが、
今回は写真のとおり一冊。
だがこの一冊はなんとしても取り上げねばならない。

その作品は犬村小六著「とある飛空士への追憶」。

 ↓

当サイト常連の方ならご存知でしょうけれども、
自分が購入するラノベは8割が中古書店で購入したもの。
だがこの作品、あまりにも各所で絶賛されているのでAmazon先生よりダイレクト購入。
世間の評価とはいかなるものか、お手並み拝見と行きますか……と読み始めたのですが。

主人公の傭兵飛空士シャルルと次期皇妃ファナの身分違いの恋、言わば王道の展開。
王道好きな俺としてはこれも高ポイントなのだが、
それ以上にテキストから頭に情景が浮かんでくる、その圧倒的な文章力に驚嘆。

脱帽。

なにこのクオリティの高さ

もはやラノベなんて枠を超えてると言っても過言でない。
ラノベの命とも言える挿絵の少なさが(ラノベとしてみた場合)欠点ではあるものの、
その少なさが、作品そのものの欠点にはまったくなりえない。

「次期皇妃を水上偵察機の後席に乗せ、中央海を単機敵中翔破せよ」

燃えますねぇ。
テキスト読んでゾクゾク来るなんて実に久々ですよ。
そしてほどなくやってくる空戦。
正直、戦闘機の知識なんてまるでないし、空戦モノの小説・映画etcを積極的に見たこともない、
だがそんな俺でも引き込まれる、流れるような文章。
他のラノベなら間違いなく挿絵が入るようなところに、ないんですな。挿絵。
でもそれがまったく問題になってない。
桿を握るシャルルと同じように、いつしかページをめくる俺の手も汗を握っていた。

> ファナは自分が握りしめている水着を眺めて、もう少しましなものを掴まなかったことを後悔した。

この水着が大活躍してしまうのが、この作品がラノベたる所以。
ベタだけど笑ってしまう。
空戦突破→つかの間の休息→再び空戦と言うこの緩急差も素晴らしい。

――ファナと一緒に逃げろ。
――彼女もそれを望んでいる。
――世界の果てまでふたりで逃げろ。

この作品が安っぽいラノベと際立って別格と感じさせる一場面。
陳腐な言葉で言えばワクテカが止まらない。
そして、この選択次第では作品評価おそらく別のものになっていたはず。

『踊ってよ、シャルル』

うーわーやられたー(天を仰ぐように)
こんな伏線なんて想像すらしなかったわ。
そうだよな、シャルルならそうするわ。
自分自身の想像力がいかに陳腐なものか、絶望した。
そしてこの伏線の昇華っぷりに興奮した。

だからふたりが辿った結末は、あなたが決めるしかない。(ネタバレ反転)

思わず再び天を仰いだ。
こんな爽やかな読後感を味わったのはいつ以来だろう。
なんとも表現しがたいこの余韻。
少なくとも過去12回にわたって書いてきた「ラノベレビュー」(のべ40冊前後か)の
中にはそんな印象を抱いたものは一冊たりとも存在しない。
そして読み終えて、表紙の絵を眺めたとき――三度(みたび)天を仰ぐ俺であった。

この稚拙な文章書き(=俺)がどれほどこの作品の魅力を伝えることが出来ただろうか。
正直、しばらく他のラノベ作品を読む気がしない。
(だから1冊だけのレビューを書くことにしたと言うのもある)
こんな日記の駄文は読まなくていいんで、今すぐ本屋に走れ。
もしくはAmazonへ飛べ。
そして買って読むべし。鏑木全力でお勧めの一冊
是非この感動を分かち合おうではありませんか。


今回を持ってこのラノベレビューを終わりにしても悔いはない程のレベル。やめないけど。

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コメント

 どうもこんばんはです。鏑木さんと同じ箇所で天を仰いだサトシアキラでございます。
 …実を言うと、綴じ込みの水着ファナに四度目、別の(ry←折角鏑木さんがマジメレビュー
して下さってるってのに!←息子を怒るように
 
 大体の感動は本文中で鏑木さんが触れてらっしゃいますが、とにかく良い作品というのは

>それ以上にテキストから頭に情景が浮かんでくる、その圧倒的な文章力に驚嘆。

 コレに尽きるんですよね~。独りよがりで、思い描いたものが作者の頭の中にしか無いだろう的な文章力の作家というのも散見しますからね。…さて、滝にでもうたれてきます。

 それでは。

投稿: サトシアキラ | 2008.04.15 22:39

>サトシアキラ様
お世話になっております。
お気づきとは思いますが「各所で絶賛」の一つがサトシアキラさんのサイトでした。これはとんでもない快作があったものです…。

> …実を言うと、綴じ込みの水着ファナに四度目、別の

別の何かは分からないことにしておきます(笑)
挿絵が少ないのは事実として、綴じ込みがまたとんでもない破壊力なのですよね、これ。

> 大体の感動は本文中で鏑木さんが触れてらっしゃいますが

実は読み終えたのは先週末、記事のアップロードまで4日間寝かせていたりします。
この4日間の駄日記の裏で推敲に推敲を重ね、最低限のポイントは伝えられたでしょうか…

> 思い描いたものが作者の頭の中にしか無いだろう的な文章力の作家というのも散見しますからね。

全く持って仰るとおりでして、どの作品とは言いませんが、過去取り上げたラノベの中にも…
私も粋がって書いてみたことがありますが、あとから読み返すとなんと陳腐なことか…

> さて、滝にでもうたれてきます。

荒行の成果、期待しております(笑)
それでは。

投稿: 鏑木 | 2008.04.15 22:56

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