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#2 帰ってきた魔法少女

初音島フェリー乗り場。

俺、ことり、美春の3人は音夢を出迎えるためにここに来ていた。
美春によると、話はこうだった。

「さっき、音夢先輩から電話があってですね。
急に兄さんの顔を見たくなったから、初音島に帰ります』って。
 それで、もう向かわれてるのだそうです」

――。

――――。

「遅いですねぇ」

美春の声で我に戻る。
フェリーが到着してしばらくするが、それらしき影は見えない。
美春の話から考えると、この便に間違い無いのだが……。

「あ、あれっ?」

ことりがらしからぬ素っ頓狂な声を上げる。

「ことり、どうした?」
「あれ……芳乃さんじゃないでしょうか」

ことりが指さすその先。

ガラガラガラ。
不釣合いな茶色いスーツケースを引っ張っている金髪の少女が目に入った。

「あっ、お兄ちゃんっ!」

ガラガラガラガラッ
物凄い勢いでスーツケースと金髪の物体がこっちに向かってくる。

ぎゅ~~~~

かわす間も無く、俺は金髪の物体に抱きつかれていた。

「お兄ちゃん~! 連絡してなかったのに迎えに来てくれるなんて。
 ボク嬉しいよ~! これも愛のなせる業だねっ」

「いや、さくら、あの……」
「あの、芳乃さん」

「……え? あれ、白河さん?」

さくらは俺に抱きついたまま、きょとんとした表情でことりを見つめている。

「私たち、音夢さんを迎えに来たんです」

「えっ?」

「そうなんですよぉ~。さきほど、音夢先輩から連絡がありましてっ!」

「にゃ、にゃはは……そうなんだ……」

そう言うさくらには冷や汗のようなものが浮かんでみえた。

「さくら?」
「お兄ちゃん……」

「とりあえず、離れてくれないか」
「あ、うん……」

さくらは大人しく俺から離れた。
そんなさくらに、ことりが声をかける。

「芳乃さん、お時間ありますか?」

「え、うん。ボクは大丈夫だけど」

「だったら一緒に音夢さんをお出迎えしませんか?」

「う、うん……そうだね」

さくらの返事はどこか上の空だ。

「さくら、同じ船で見掛けなかったのか?」
「う、う~ん……まさか同じ船に乗ってるとは思わなかったから……」

しばらくそんな感じで話しながら、降りてくる人を待ち続ける。

「あっ!居ましたよっ!!」

突然声を上げた美春が指さすその先には、見覚えのある髪型の少女が居た。
間違いない。

「音夢せんぱぁ~~~い!!」

美春が大きく手を振る。
向こうも気付いたらしく、手を振るのが見えた。
誰かと違って慌てて走ってくることなく、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
懐かしい顔が、俺の妹がだんだんはっきりしてくる。

「……っ!」

突然、音夢の顔が揺らいだ。
まるで、見えない何かに刺されたかのように、
その表情は苦痛の歪み。
そして――――

ドサっ

「音夢ッ!」
「音夢先輩っ!?」

「音夢さん!」

「音夢ちゃんっ!」

鈍い音を立てて音夢はその場に倒れ、動かなくなった。

――――初音島の空には、季節外れの桜が舞っていた。

#3「祝福の風」へ続く

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